黒沢清(長いです、ちょっと怖い内容です)

いきなり名前で何なんだってなると思いますが、僕が最も地球上で好きな映画監督が黒沢清監督です。

理由は色々ありますが、僕は幼少からオカルト、心霊に異常に詳しくMr.マリックの弟子であった祖父がいて(亡くなる直前は黒魔術にハマっていた)例に漏れず、父もその影響下にあるため必然的にオカルト少年に育ってしまったという経緯があります。

当時僕が小学校に上がる直前でしょうか、1995年ごろは『Xファイル』映画『学校の怪談』『トイレの花子さん』『世にも奇妙な物語』 etc... など今ではテレビの規制に引っかかるような作品にのめり込み、自我を確立してきました(何の説明だこれ しかもなぜかLOSTAGEの『In Dreams』を聴きながら打ってる)

そして特にジャパニーズホラーにハマった僕は『リング』『女優霊』『四国』『マリアの胃袋』『黒い家』を経て、(正直僕の中のジャパニーズホラー熱は2001年ぐらいで終了していたけど残穢で復活)半ば必然的に黒沢清監督と出会うのでした。


もちろん最初にはハマったのは2001年の『回路』である。何を隠そう僕のホラーアンテナの基準は全てこの映画を元にしてると行っても過言じゃないです。(回路は世間一般じゃクソ映画使いですが....)

その体験ももあってか僕は2001年以降衰退して行き(偏見)日本のホラー映画がただのアトラクションとして廃れていくのを本当に見るのは辛かった。しかし、ただ一人それに抗うかのように2018年現在もホラーという枠からは多少外れつつも精力的に僕の大好きな映画を作ってくれてるのは黒沢清監督でした。(もちろん塚本晋也監督も好きですよ)

そんなリスペクトをする黒沢清監督の僕の好きな作品をいくつか紹介したいと思います。

僕の黒沢清の評価基準は「不気味度」と「役所広司度」です。(って役所広司毎回出てないやんけ)

不気味度に関して言うと、僕の中でJホラーをJホラー足らしめる一番の要素は不気味さだと考えているので乱暴な表現をしましたが、海外のホラー(アジアのほらは比較的近いので除く)と日本のホラーは決定的に違うところがあって何かと言うと恐怖を感じる対象なのです。

もちろん該当しないものも沢山ありますが、


日本  →幽霊、妖怪、怨念

海外  →悪魔、神、超常現象、ゾンビ、モンスター


との勝手な分類になり(筆者基準)多感な時期に日本文化に深く触れた人間であれば(もちろん外国籍の方もありえる)必然的に日本のホラーに惹かれるようになっていると思うのです。

そしてその日本のホラーでも特に重要な要素が「不気味さ」なのだ。

とっても遠回りしましたが、


・物理的でわかりやすい表現ではなく雰囲気の不気味さ 

例)『リング』の土砂降りの外を眺める松嶋菜々子と真田広之の会話シーン、『回路』の誰もいなくなった街のコンビニのシーンなど

・黒沢清限定でいうと、登場人物の悟りつつもどこかボカした表現

例)『回路』の役所広司の冒頭、終幕付近でのセリフ、武田真治の霊界との関係性を説くシーン

と、大体が回路になってしまいましたがこの抽象的な表現に僕は大きく惹かれてしまうのです。


というわけで僕の好きな黒沢清作品を紹介していきます。(やっとかい) 

以下ネタバレ注意です。

『DOORⅢ』1996年

いきなりビデオからですが、前二作『DOOR』『DOOR2』の監督に代わり黒沢清が監督を担当。『スウィートホーム』『地獄の警備員』の流れできた作風を一気に変え、その後の黒沢清感を確立した作品といっても問題ないぐらいほんっとに不気味です。

どんな作品かさらっというと、

生保レディの主人公がある日出会った他社のイケメン部長の危険なフェロモンに翻弄され、その謎を解いていくという非常にわかりやすいストーリー。

何回も言いますがほんとに不気味です。不気味度90%です。不気味ポイントをあげると、


・今回の悪役(被害者?)の顔がイケメンでありつつもどこか不気味。007のシャークにどことなく似ている。

・主人公が悪役の過去を調べるために訪れた資料庫のような場所で現れる奇妙な女がとても不気味。

・街中の至る所に現れ、主人公をじっと見つめて射る奇妙な女達。

・映画『回路』の序盤に登場する田口くんを腑抜けにする霊に共通するスローのような早送りのような動き。これが実際に見てもらわないと伝わらないし、黒沢清監督以外にこの手法を使っているホラーを見たことがない。ちなみに『回路』の幽霊はコケるのが面白い。もう世界初、コケる幽霊。大好き。


ビデオシリーズなのでとっても見つけにくいですがぜひ見て欲しいです。


『木霊』1998年

この映画はテレビ番組『学校の怪談G』内で放送された短編作品で、当時小学生だった僕は夕方誰もいない家に帰ってきて一人でこの番組を見てしまったがために見取り図(劇中に登場する心霊探知マップ)にトラウマを抱えてしまったぐらいです。

肝心のストーリーはというと

エスパーだと疑われている主人公(女子高生)がそれを検証するために同級生に呼び出され、放課後の誰もいない学校で地図を使い隠れた同級生を遠隔で透視、ダウンジングするもダウジングの最中に地図上に謎の黒い靄が現れ教室に隠れている同級生をどんどん吸収してしまうという内容。

これも不気味度かなり高いです。不気味度85%


正直学校の怪談世代の僕としては感じるアンテナにかなりのバイアスがかかっていると思うし今の若い人には全く伝わらない内容かもしれない。けれども高校生の若さゆえの衝突や、地図を使った間接的な表現はかなり観ていて楽しい。


不気味ポイントとしては、

・夕方5時ぐらいなのに学校に生徒5人先生1人しかいない。黒沢清監督は普段人が沢山いる場所をガランガランにして不気味さを煽る。独特の寂しさもある。

・教師として唯一学校に残っていた田島先生が発狂して大講義室で黒板に書いた落書きを披露するシーン。一つ間違えば壮大なギャグになるところをそう見えないようにしている。

・教室や廊下を吹き抜ける風を、入口のカーテンで不気味に表現していて風通しの良さとそこに何かいるであろう雰囲気を表現している。

・一番の不気味ポイントは透視、ダウジングで使用している地図上を蠢きながら移動する黒い靄(もや)だ。これは見てもらわないとわからない。トラウマです。


これはビデオを探さなくともyoutubeなどにたくさんあるので見て欲しいです。おためしあれ。


『降霊』1999年

ほんとに紹介しだすと止まらないので最後です。

これは黒沢清にハマってから見つけた作品。関西テレビで放送されていたドラマで、キャストがとても豪華で、役所広司、菅田俊などの常連に加え、役風吹ジュン、草なぎ剛(草なぎ剛はホラーに合う)といったそうそうたるメンツ。これは不気味ってか不気味の塊。不気味度95%。

ストーリーは、

放送局で効果音専門のレコーディングを生業とする役所広司と霊感が強いその妻風吹ジュンがふとしたことから誘拐をしてしまった女児を事故ながら殺害してしまい、それをきっかけに起きる心霊現象、凄腕の警察であるキタローとのやりとりを描いた作品である。

というかホラー半分、サスペンス半分?

不気味ポイントが、

・序盤、風吹ジュンが霊感が強すぎるが故にファミレスでバイト中、客に扮する大杉漣についた女の例に気づいてしまい、気づいたことを女の例に気づかれるシーン。大杉漣が会計を済まし帰る際にその後を不自然な動きでホバリングする女の霊の動きがとにかく不気味。

・役所広司が働く放送局の雰囲気がとにかく不気味。なんか音の反響をコントロールされた密室空間って不気味さを感じるんですよね。レコーディングスタジオとか....

・不気味さとは違いますが夫婦揃って女児の遺体を山に遺棄しにいく途中、大きなバンを運転するシーン。二人の鬼気迫る表情がリアル。多分僕も人を埋めにいくときはこんな顔してるんだろうなと思いました。

ちなみに黒沢清監督作品は正面からバスに乗っているところや運転シーンを描く場面が多く、どれもただの運転シーンではないので必見です。


この作品は大抵レンタルビデオショップにあるので借りて見てくださいね!札幌だと狸小路のゲオにあります。(道民向けかいっ!)


以上です。ジャパニーズホラーソムリエという資格が存在するのなら僕は寝る暇も惜しむことなく勉強します。